Time







時間というものはとても卑怯な奴だと思う。



愛する人と共にいる時は時間など存在しなければいいとつい願ってしまう。だけど、時間は意地悪だから私の小さな願い事など聞き入れてはくれない。



時間というものはとても卑怯なものだと思う。



恐怖を感じている時は早く過ぎて欲しいとつい願ってしまう。だけど、時間は意地悪だから私の小さな願い事など聞き入れてはくれない。



…あれ、ちょっとこれはおかしいわ。

これじゃあ、時間が卑怯というよりも私が卑怯みたいじゃない。

都合のいい時だけ時間など消えろと願い、都合の悪い時はさっさと過ぎてしまえと願う。



………まあ、とにかく時間はいい加減だという事なのよ。







「このまま時間が止まっちゃえばいいのに」



私はぼんやりと呟いた。



「…それはどういう意味だ?」



隣で彼が私を見て聞いてくる。

あれ、聞こえてたのかな。独り事のつもりだったんだけど。あ…それに私、時間が止まればいいなんてまるでこの瞬間が大切みたいな言い方。愛する人ともっと一緒にいたいという想いがあるみたいじゃない。……そうよ、言えばいいのよね。あなたともっとこうしてたいからよって。言ったらきっと彼は驚きを隠せないだろうなぁ。まさかグレンジャーからそんな事言うなんて!とか思うのかしらね…。



「意味?意味なんてないわよ。何となくいい天気だと思って」

「ふぅん…」



私って素直じゃないわ。












※人間なんてそんなもの。